核家族化が進み、地域のつながりが見えにくくなるなか、子どもたちの健やかな成長を支えるためには、家庭・地域・教育機関が手を取り合っていくことがますます大切になっています。総合子ども学研究所では、地域の親子や保育者、そして保育者を目指す学生が出会い・学び合い・つながる場として「子育ち・共育ちフォーラム」を開催しました。基調講演やパネルディスカッションを通して、子どもの育ちに寄り添うための視点や、地域の中で大人が果たす役割について考える、あたたかな学びの時間となりました。
基調講演「子どもの育ちに寄り添う 乳幼児保育の実践と展望」

井桁容子 先生
子どもは、大人の表情や声のトーン、距離の取り方といった日々の小さな関わりを敏感に受け取っています。「自分はここにいて大丈夫か」「この人は安心できる人か」を確かめながら過ごしているため、何気ないふるまいの積み重ねが安心や信頼の土台になります。
「寄り添う」とは、ただそばにいることや気持ちを受け止めることにとどまりません。泣いている子どもがいたとき、その泣き声を止めることが目的ではなく、「なぜ泣いているのか」「どんな思いがあるのか」「何を求めているのか」を考え、その子が必要としていることを満たすことが大切です。子どものサインの奥にある理由を洞察し、背景や状況に合わせて対応していくところに、保育の専門性があります。理解され、受け止められた経験は子どもの安心につながり、次の遊びや挑戦へ向かう力になります。
子どもの「やってみたい」は安心・安全な環境があってこそ出てくるものです。安心できるから挑戦でき、挑戦が自信になり、さらに安心が深まっていく——その循環の中で、遊び込みや試行錯誤、好奇心の広がりが育っていきます。大人は、子どもの育ちを支える環境を整え、そっと後押ししていく役割を担っているのです。
パネルディスカッション
パネルディスカッションでは、「子どもの育ちを支える大人の役割〜公と私の交わり〜」をテーマに、さまざまな現場の実践が紹介されました。
認定こども園千成幼稚園 園長 南光代 先生
福島県学び舎ゆめの森 校長・園長 南郷市兵 先生
敬愛短期大学 教授・教務部長 新田司 先生
ダイアローグセッション
フォーラムの後半では「ダイアローグセッション」を行いました。参加者がグループに分かれ、子育てや保育の中で感じている困りごとを出し合い、その背景を共有しながら、解決に向けたアイデアや工夫を一緒に考えました。立場や経験の違いを越えて語り合うことで、「自分だけの悩みではなかった」と気づいたり、別の視点からヒントを得たりと、日々の実践につながる前向きな手がかりが生まれました。


子どもの育ちは、家庭や園・学校だけでなく、地域の人や場との出会いの中で広がっていきます。敬愛短期大学はこれからも地域のみなさんと一緒に、子どもも大人も育ち合える「共育ち」の場をつくっていきます。