幼稚園や保育園など、子どもたちを育む場でも残念ながら毎年のように事故が発生しています。特に重篤な事故は、子どもの命に関わる大きな問題です。そのため、保育者には事故を未然に防ぐための知識と実践力が求められます。2年生を対象とした授業「保育内容演習『健康』」(担当:齋藤めぐみ教授)では、実際の事故事例をもとに学びを深めています。
これまで学生たちは齋藤教授の指導のもと、講義形式で事故になりうる原因、事故への対応、予防策について学んできました。それら知識を応用して、学生たちは保育現場で実際に起きた6つの重篤な事故について6グループに分かれて、何が原因であったのか、どうやったら防げたのか研究してきました。11月26日(火)、今回はいよいよ事故事例研究の発表会です。
ワイドショーを参考に寸劇で分かりやすく伝える
齋藤教授が学生たちに求めた発表方法はとてもユニークなものでした。テレビのワイドショーを参考に、学生たちはキャスター役やコメンテーター役、再現VTRに登場する保育者や子ども役などに分かれ、それぞれの事故について寸劇をします。寸劇形式を採用したのは、事故を自分事として真剣に受け止めて考え、事故の内容を他の学生にわかりやすく伝え、記憶に残りやすくすることで、「学生たちが絶対に事故を起こさないように」との齋藤教授の願いがあるからです。
第2グループが担当したのは、2019年、鹿児島県の許可外保育園で起きた事故事例です。保育士がまだ寝返りのできない乳児をうつぶせに寝かせそのまま放置したことで、乳児が窒息死した痛ましい事件です(当時の記事)。この事件は、経営者が「うつぶせ寝にすると寝つきが良くなる」と、絶対にしてはいけないうつぶせ寝にするよう保育士に日頃から伝えていたことに加え、県の基準を超えた乳児・児童を受け入れていたために、保育者が十分に目を配れなかったこと、さらには睡眠中の乳児の状態を確認せず経営者が外出してしまったことなど、複数の過失が重なっていました。学生たちは、「うつぶせ寝にしたこと」「子供どものお昼寝中には保育士同士で連携をとって継続的に見守ること」などの防止策をコメンテーターのセリフとして伝えていました。
このほかの寸劇でも、事故の具体的な状況や原因、防止策がわかりやすく描かれ、発表者はもちろん、それを観る学生たちにもわかりやすく伝えることができました。小道具や効果音を駆使して臨場感を演出するなど、各グループの発表は工夫を凝らした熱演となり、楽しくも真剣な学びの場が生まれました。
齋藤教授は「事故は起こらないに越したことはありませんが、起こる場合もあります。でも重篤な事故には必ず原因があります。原因を作らなければ防ぐことができるのです。、むやみに事故を怖がるのではなく、適切な対応策を身につけてほしい」と話します。この授業を通じて、学生たちは事故予防に対する意識を高めることができたことでしょう。